水、お茶、コーヒー、ジュース等の飲み物や、スープ、みそ汁等の汁物のような水分系に、英語の冠詞はつくのでしょうか。
こういった水分系は数えられないので、冠詞aはつかない。
そう思ったあなた、正解です。
では全くの無冠詞なのかというとそういうわけではなく、何となく英文を見ていると、theがあったりしますよね。
しかもone beer, two beers, three beersのように複数形のsがついて、数えられることすらあります。
でも水分系は数えられないので、冠詞はつかないんじゃ…?
今回は、水分系と英語冠詞について、詳しく解説します。
水分系と冠詞の基本
私は中学生のとき、運動系の部活で水分はできるだけ控えるように指導されました。部活中にものすごい汗をかいている部員に、顧問の先生が、「お前、水分取り過ぎだ」と注意したのを覚えています。
アメリカでは、一日グラス8杯の水を飲むように言われていて、とても驚きました。
「グラス8杯の水を飲む」は、
drink eight glasses of water
水は数えられない名詞なので、量を示すときは、グラスやカップのような容器に入れたり、具体的に
one litter of water
水1リットルのように、単位を伴います。
このように、飲み物系は、glass, cup, bottleのような容器や、litter, gallon, fl.oz, cup, quarter, pintのような単位を伴って表します。
スープやみそ汁等の汁物系は、cup, bowl のような容器で表記するのが一般的です。ここで言う汁物系には、みそ汁とかシチューとかチャウダー等のドロドロした状態のものも含まれます。
a cup of clam chowder
a bowl of miso soup
まとめると、
■ 水分系は数えられないから、冠詞はつかない
■ 容器や単位をつけて、量を示す
水分系に複数形のsがつくとき
「数えられない名詞「ビール」を数える? 英文法不可算名詞」で説明しましたように、水分系に複数形のsがつくことがあります。
さっき水分系は数えられないって言ったばかりでしょ、と思わないでください。文法上はそうなんです。
しかし言語って生き物です。実際私たちの生活の中で、私たちと一緒に生きているんです。
だから水分系に複数形のsがついたりするんです。
one beer, two beers, three beers
one wine, two wines, three wines
警察が酔っ払い運転を取り締まり、運転手に、お酒をどれくらい飲んだのか尋ねると、酔っ払い運転手はtwo beersのように答えます。
コーヒーも複数形のsをつけるのを、聞いたことがあります。カフェインの取り過ぎは良くないよね、なんて話から、コーヒーを一日どれくらい飲むか、という質問になって、four or five coffees と答えたのを聞いたことがあります。
ビールやワイン、コーヒーも、明らかに、
two bottles of beer
three glasses of wine
five cups of coffee
のように容器が抜けているんですが、いちいち言わなくても推測できるので、省いているのでしょう。
それから憶測の範囲ですが、飲むのを控えた方がいい飲み物のとき、この省略が起こるような気がします。罪の意識から、ハッキリ表すのを避けているのでしょうか。
水分系に冠詞theがつくとき
水分系の名詞に冠詞theがあるのを、見たことがあると思います。水分系は無冠詞なんじゃ…、と思っているあなた、またまた困惑させてしまいます。
冠詞theは名詞を限定させる働きがあるので、名詞が数えられるかどうかは関係ありません。
例1)
A: Did you drink coffee this morning? 今朝コーヒー飲んだ?
B: No. I'll go get it. ううん。飲みに行こっと。
例2)
A: Did you drink the coffee this morning? 今朝あのコーヒー飲んだ?
B: I did! It was good. 飲んだよ。おいしかった。
例1)でAが「今朝コーヒー飲んだ?」と聞いています。コーヒーに冠詞theがありません。このことから、Bは朝コーヒーを飲む習慣があることをAは知っていて、今朝は飲んだのかとBに聞いているのです。するとBはまだ飲んでいないので、飲みに行ってくるよ、となったわけです。
この後の会話は、例えばAが、「まだ飲んでないなら、私も一緒に飲みに行く」とか、「近くで新しいコーヒーショップがオープンしたらしいわよ。行ってみたら?」とか、「新しいコーヒーメーカーを買ったの。飲みにおいでよ」とか、そんなふうに展開されることが予想できます。
例2)では、冠詞theがコーヒーについています。つまりどのコーヒーについて話しているのか、AとBの間では分かっていて、特定のコーヒーについて話しているのです。例えば、いつもよく行くコーヒー店で、クリスマス限定のコーヒーが始まった。おいしそうだから、ぜひ試してみたら、とAはBに勧めていた。そして翌日、AはBに、あのコーヒー(クリスマス限定のコーヒー)を飲んだかどうか聞いたのです。
このように冠詞theは、名詞が数えられようがそうでなかろうが関係なく、つくことができます。
まとめ
水とかスープとか、固形物ではない水分系の名詞と冠詞について、説明しました。
基本は、数えられない水分系の名詞には
■ 冠詞aはつかない、複数系のsもつかない
■ 容器や単位を伴って、量を示す
基本プラス、
■ 複数形のsがつくことがある
■ 文脈上、冠詞theはつくことがある
基本を頭に入れて、それ以外の場合はどうなのか、柔軟に考えると、冠詞について理解が深まります。
冠詞って奥が深いですね。