「トイレ借りてもいい?」「電話借りてもいい?」「車借りてもいい?」と人から何かを借りるとき、動詞の「借りる」=borrowと覚えていませんか?
しかし日本語で言う「借りる」というシチュエーションのほとんどが、英語ではuseに当たると思います。
今回は二つの動詞、利害関係が無いときの、useとborrowの違いについて、解説します。
useとborrowの違い
use=使う
と覚えているのが普通ですよね。「使う」ってどんな状況なのでしょうか。
学生の頃、図書館で勉強していると、よく見知らぬ人から
Can I use your pen?
と尋かれてペンを貸すと、そのまま返ってこないことがよくありました。
ペンを借りた人は、ちょっとメモするつもりでペンが必要になり、私にペンを借り、メモを書いている間に私から借りた物だということを忘れ、いつもの癖でカバンに入れたのでしょう。盗むつもりはなかったと思いますが、私のもとに返ってこないので、結果としては、盗まれたと同じです。腹が立ちます。
そこで私は考えました。人にペンを貸すのは構わない。人には親切にしたい。しかし返ってこないのは腹が立つ。どうやったらちゃんと借りた人は私に返してくれるだろうかと。
で、気づいたんです。ペンを借りる人を、私はuseではなく、borrowの状態にさせていたと。
それまでは、ペンを渡すとその人は自分が使っていた机へ向かい、私の見えない所へ行ってしまっていたました。何分も時間が経って様子を見にいくと、まだペンを握っていたり、姿が見えなかったり。腹が立つ。
そこで、useはuseでいこうと決めました。
ペンを借りていい?と尋かれたら、もちろんOKとペンを差し出します。そして私の視野に入る場所で、数分間のみ、貸出すことにしたのです。
この例が示すように、
- borrow:
借りる
一時的に自分の物にする
一時的に自分の所有物として、ある程度まとまった時間使用する
一時的に持ち出したりする
必ずしも借りたものをいじくって、使ったりするわけではない - use:
使う
自分の所有物としてではなく、自分以外の人(グループや団体)の所有物として、それを認識して、短時間使用する
所有者から遠く持ち出すことは、あまりない
私からペンを借りた人たちは、useのつもりだったのでしょうが、ノートにメモするうちペンが借り物ということを忘れてしまったのでしょう。ですから、そのことを忘れさせないよう、私の目の前でペンを使ってもらい、済んだら速やかに返してもらいました。
借りる物たち
ここで冒頭で表した、借り物たちについて考えましょう。
まず、トイレ。トイレを友人宅で借りるとき、確かに一時的にトイレは自分で貸切状態になります。まるで自分の所有物のよう。しかしトイレは、
use a bathroom
もしborrowを使っって、borrow a bathroomと言ったら、まるで屋外のイベント会場に一時的に立てられた仮説トイレのように、友人宅のトイレの部屋をまるごと持ち出すようなイメージです。
ここまで極端ではないとしても、borrow a bathroomともし言われたら、私だったら、「この人、近所で何かイベントか何か開いて、来客のために、うちのトイレを開放してほしいのかな」と思います。
電話も、
use your phone
でしょう。
もしborrow your phoneと尋かれたら、固定電話なら、電話線を抜いて、電話機を持ち出すのかなと思います。
今は携帯電話やスマホが主流ですから、
- use your smartphone →「ちょっと家に電話するから貸してほしい」という解釈
- borrow your smartphone →「君と同じスマホ機種が欲しくて、明日取り扱い店に行くんだ。そこで君のスマホを見せれば話が早いし、間違いがないだろうから、明日午後借りてもいいかな」というシチュエーション
ここでもう一つのポイントは、borrowは必ずしもその借り物をいじくって使用するのではない、ということです。つまり自分の手元に置いて、一時的に自分の所有物と化する状態だったりします。
スマホを本来の目的、電話したりメールしたりアプリを使用したり、ということだけでなく、一時的に所有物のように手元にあることが目的になっています。上記の同じスマホ機種が欲しいから、借りるborrowとは、まさにこの定義です。
もっと分かりやすい例として、「車を借りる」ことを考えてみましょう。
- use your car →「ちょっとスーパーまで買い物にでかけるので、1時間ほど借りてもいいか」
- borrow your car →「急に今週末実家(県外)に帰らなきゃいけなくなって、週末借りてもいいか」
さらにborrow your carで、車を借りて実家に帰るとき、早くいい人見つけろとうるさい親戚を黙らすために、彼女を連れて帰ると豪語した友人。彼女がいる友人に、
Can I borrow your girlfriend this weekend? 今週末、お前の彼女借りていい?
と信じられないことを尋いていました。
まとめ
borrowとuseの違いがお分かりいただけたでしょうか。
基本的に日本人が「借りていい?」と尋くときは、useを使うと無難です。
冒頭で述べました、利害関係が無いときの「借りる」borrowとuseの違いと使い方を説明しました。