英語の冠詞theは何と発音するか、ご存知でしょうか。
おそらくほとんどの方が、”ザ”と答えるでしょう。個人的には"ザ”より、"ダ”の方がそれっぽい気がしますが。
ところで中学一年生のとき、冠詞theは、母音の前では”ジ”と発音すると習いました。
the grape juice
the orange juice
グレープジュースだと”theザ”と発音しますが、これがオレンジジュースになると”theジ”となる…。
まるで、冠詞aは母音の前ではanになるという文法のルールのように、冠詞theの発音ルールとして習いました。
しかし実際はちょっと違います。
それよりも、冠詞theを”ジ”と発音するルールは、その次の単語が母音で始まるか子音で始まるかではなく、もっと別のところにあります。
今回は、冠詞the の発音について、詳しく解説します。
母音か子音かがポイントではない!?
冠詞aは、母音の前ではanになるという、英文法のルールがあります。
a child
an adult
子供ならaだけど、大人になるとanになる。
これは文法上のルールです。
では冠詞theの発音はこれと同じで、子音の前では”ザ”、母音の前では”ジ”となるかというと、そういった文法上のルールはありません。
私がアメリカの英語学校に留学中、講師にtheの発音について質問したことがあります。子音の前では”ザ”、母音の前では”ジ”となるか、と。
するとその講師は、そんなこと聞いたことがない、と答えていました。
その講師は何十年も留学生に英語を教えた経験のあるベテランの方でしたが、そんな講師でさえ、そのようなtheの発音「ルール」は聞いたことがなかったのです。
だからといって、その講師を含め、英語を母国語とするアメリカ人と話しているとき、母音の前のtheは”ザ(実際の発音は”ダ”に近い)”と発音しているわけではなく、よく聞くと何となく”ジ(実際の発音は”ディ”に近い)”と発音しているような…。
さて、どういうことでしょうか。
「言い易いから」が本当の理由?
英語を母国語とする人は、子音の前では”ザ”、母音の前では”ジ”と発音することを意識して、そのように発音しているわけではありません。そういう決まった発音のルールがある、と意識しているわけではないので、そういうルールがあるなんて知らない人がいるのです。個人的には、知らない人は結構多いと思います。
もちろん中には、それはtheを発音するときのルールだと言う人もいるかもしれません。
しかしどちらかというと、母音の前のtheは”ディ”、子音の前は”ダ”のように発音すると、全体の流れがいい、言い易いから、そのように発音するのです。
確かにその方が、発音し易いような気がします。速く言おうとするときは、母音の前のtheを”ディ”と発音する方が、スムーズに発音できます。
発音のルールだからというより、言い易いから。
なので、もし母音の前のtheを”ダ”と発音したとしても、それは間違えたわけではなく、言いにくい方を選んだ、と思いましょう。この方が気が楽です。
ただ、母音の前のtheを”ディ”と発音すれば、何となくネイティブっぽく聞こえるので、ちょっとだけ意識してみてはいかがでしょうか。
強調するとは、ディ!
母音の前のtheは”ディ”、子音の前は”ダ”のように発音するという決まったルールは無いけれど、母音子音関係無く、theを”ディ”と発音するときがあります。
それは、単語を強調するときです。
例えば親知らずの歯が痛くて痛くて、夜も眠れないほどに痛い。仕事にも支障が出て、遂に歯医者さんに行ったら、抜きましょうということに。歯医者さんが抜歯をして、その抜いた歯をあなたに見せながら、
This is the tooth.
これがその歯です。
冠詞theは、子音で始まるtoothの前ですから、普通は”ダ”と発音します。しかしこれを”ディ”と発音し、それを強調して言えば、「これがあなたを悩ませていた、まさに犯人です」という意味合いになります。
私はソフトクリームが好きで、よく食べます。その中でも金沢駅に隣接するデパートで食べた、抹茶チョコでコーティングされたバニラソフトクリームが、一番おいしかったです。ちょっとお値段も高かったですが、その価値は十分あります。ですから私の中で、ソフトクリームと言えば、これなんです。
いかにおいしいかを友達にアレコレ説明しても、やはり百聞は一見に如かずということで、実際にそのお店に連れて行き、
This is the soft serving ice cream.
theを”ディ”と発音し、それを強調して言うことで、「これが、私が何度も説明した、あのソフトクリームなんだよ」という意味合いになります。
このように、単語を強調したいときは、その単語が母音または子音で始まるかどうかは関係なく、theは”ティ”と発音します。
注意!母音か子音かは、スペルではなく発音
ここで一つ注意したいことが。
冠詞aとanと同じように、theの撥音も、その次に来る単語が母音で始まるか、子音で始まるかは、スペルのことではありません。
その単語が、母音の発音で始まるか、子音の発音で始まるかがポイントです。
hourとhonestのスペルは子音hで始まりますが、発音は”アワ〜”や”オネスト”のように母音で始まります。冠詞aがanになるという文法上のルールが適用されるケースで、theも”ディ”と発音するとよいでしょう。
uで始まる単語は、もっとクセモノです。
unbrellaは、”アンブレラ”で母音の発音で始まりますが、unitedでは”ユ”という子音で始まります。
単語のスペルで判断しないで、発音をしっかり理解しましょう。
まとめ
英語の冠詞は、ただでさえ日本人にはその使い方を理解するのが難しいものですが、発音にまで気をつけなければいけないとなると、益々難しくなりますよね。
しかしパターンは必ずあります。それを見出すことで、冠詞への理解は深まり、難しいものではなくなります。
今回は、冠詞theの発音について、説明しました。