英語の不定詞にnotをつけて否定形にするとき、
I was told not to talk to him.
彼とは話さないようにって言われた。
”not to talk”のように、不定詞の前にnotをつけるように習いました。
習いましたって、どこで習ったのかというと、中学校高校のときとアメリカの大学の留学先で。
それなのに、”to not do”という表現を使う人に出会ったのです。しかも2人。しかもその内の一人は、医師です。きっと頭いいはず。
で、気になって、”not to do”と”to not do”の違いを調べてみました。どちらが英文法的に正しいのか、あるいは正しい正しくないの問題ではなく、意味が違うだけなのか。
今回は、英文法の不定詞について説明します。
よく使われるのは、”not to do”
アメリカの大学で、プリントジャーナリズムのクラスを受講したことがあります。そのクラスでは、新聞や雑誌の記事の書き方を学び、英語の文法、句読点、スペルなどをきっちり叩き込まれました。
そのクラスで私は、「”not to do”が正しい」と習ったのです。
英文法にはとても厳しかったので、もし”to not do”なんて書いたら、ものすごい減点だったでしょうね。
調べてみると、確かにプリントジャーナリズムの世界では、”to not do”より”not to do”が使われるようです。(http://www.learnersdictionary.com/qa/to-not-be-or-not-to-be参照)
Merriam–Websterという、主に辞書の出版において、とても歴史あるアメリカの出版社の編集者が言っているので、信頼できると思います。事実、私もそう習ったし。
これは私個人の印象ですが、学校の教員の方たちも、どちらかというと、”not to do”が正しいと教えるような気がします。
中には、英文法的に”to not do”は間違いで、”not to do”が正しいと言い切るアメリカ人もいるようです。
しかし先程のMerriam–Websterの編集者が言うように、どちらも間違っていない、という意見が大半です。
不定詞でnotをtoと動詞の間に置く”to not do”の形を、a split infinitiveと言います。infinitiveは不定詞、splitは分けるという意味ですから、分けられちゃった不定詞。ちょっと悲しい…。
天の川で隔てられた彦星と織姫みたいです。この場合、toが織姫で、動詞が彦星でしょうか。切ないです。
そういう切ないことが嫌いな人たちにとっては、”to not do”は間違っていて、不定詞の否定形は”not to do”が英文法的に正しいと言い張るわけです。
天の川(not)に邪魔させるもんか、彦星(動詞)の側にいるんだという、強い織姫(to)の意思が伝わってきます。
とにかく確実に言えることは、
”to not do”より”not to do”が一般的で、よく使われる
ということです。
みなさんとりあえず、”not to do”を使いましょう。
意味の違いは?
先程も言いましたが、”to not do”と”not to do”は、どちらが正しい間違っているという問題ではないようです。
それでは意味の違いはあるのでしょうか。
調べてみると、どちらを好んで使うかに過ぎないように見えます。しかしあえて意味の違いを言うなら、何を強調したいのか。
1) Remember not to talk when she reads a book.
2) Remember to not talk when she reads a book.
1) では、彼女が読書中は、話しかけない ように。”not to talk”で、話すという行為をしない、つまりおとなしくしててね、彼女一人にしておいてあげて、そっとしておいてあげて。
2) では、彼女が読書中は、積極的に意識して、喋るという行為をしないようにね。話しかけたくなるのをとにかく堪えて、唇に力を入れて口を固く閉じてて。これは例えば、読書は彼女にとってものすごい大切なことで、以前読書中の彼女に話し掛けたため、ものすごい怒って大変だった。そんな経緯があるのかもしれません。
またネットの英文法フォーラムで見つけた、はっきりとした違いは、
”to not do”という間違った表現を使うのは、英語を母国語とする人だ
私にとって、これが一番しっくりきました。なるほど。
有名なa split infinitiveと言えば
映画「スタートレック」の中で、
to boldly go where no one has gone before
というフレーズがあります。
“to boldly go”という表現も、a split infinitiveです。こちらはnotではなく、副詞boldlyを使って、不定詞を隔てちゃってます。
a split infinitiveが嫌いな人からすれば、”to go boldly”が英文法的に正しいのですが、
1) to boldly go where no one has gone before (映画で使われたフレーズ)
2) to go boldly where no one has gone before
違いを考えてみましょう。
1) は映画で使われたフレーズです。副詞boldlyが動詞goの前にあるので、副詞の意味がとても強調されている印象を受けます。誰も行ったことのない場所へ、よほど行きたいんだなぁ、と言う感じ。映画を観ている方に、感情が伝わってきますよね。
2) は、副詞をとってつけたという印象。英文法的にはこちらが正しいと、私は思います。しかし正しいことって、人の感情にまで伝わってこないこと、多いですよね。
さすがにハリウッド映画。そいうことをちゃんと考えているんでしょうね。
最後に
言葉って、いつも思うのですが、間違った表現でも、大勢がそれを使うようになれば、やがてそれが正しくなる、という不思議な生き物です。
英文法的に間違っているという人もいる中で、“to not do”も、少しずつ受け入れられているように思います。
しかし今でもよく使われるのは、”not to do”です。
どっちがどうなの?と困惑しないようにするためにも、不定詞の否定形は”not to do”を使いましょう。
以上、英文法的に正しいのはどっち?意味の違いは?英語の不定詞の否定形、“to not do”と”not to do”について解説しました。