英語の冠詞theの使い方で、というお題で、「海や川の水域の名前にはtheをつける」と、これまた一辺倒に説明してある英語の学習サイトがたくさんあります。
もちろん学校でもこのように習ったと記憶しています。
しかしこれには「なぜ?どうして?水とtheの関係は?」という非常に大事な部分が抜けています。
「水域にはtheをつける」と機械的に覚えては、例外の場合や水域以外のケースをいちいち覚えなければいけませんし、theの使い方の応用もききません。
機械的に覚える、というか、機械的にしか説明がされてこなかったので、私たち日本人はtheの概念を全く理解できていないのだと思います。
今回は、水域に注目して、英語の冠詞theの使い方を解説します。
全ての水は繋がっている
世界地図を眺めていて、あることに気がつきました。その日の私は頭が冴えて、ものすごい発見をしたのです。
近所の小川は、ナイル川につながっていると!
その小川はやがて大きな河川につながり、その河川は海につながっています。ナイル川も同じ海につながっています。つまり地球上の水はつながっているのです。
この発見は水域とtheの関係について考えるときのポイントです。
英語冠詞theの基本的概念
他のページでも解説してきましたように、英語の冠詞の役割はspecification、つまりどれだけの具体性があるのかを示します。
あなたの頭に思い浮かんだある物のイメージが、どれだけ具体的なのか。ここでは簡単に、そのイメージがより具体的でればtheを用いると考えてください。
先ほど述べたように、水は地球上つながっているので、theを用いて水域を具体的にしていく必要があります。
形や周りの陸の状態、深さなど、様々な要素から、大河と呼ばれたり、海洋と呼ばれたり、小川と呼ばれたり、湾と呼ばれたりします。
例えば内陸部から水が流れて、海へつながっている。かなりの水量があり、横幅や深さ、距離もある、そういう水の流れを「川 river」という名前をつけて、「川 river」というカテゴリーに分類する。このカテゴリーに属するのは、世界中にきっとたくさんあるので、ここまでの分類作業の時点では、まだ
a river
です。
で、それら一つ一つに名前がつけられて、たとえば紀の国市に流れる水なので紀の国という名前が川につけられたとき、では紀の国川とは具体的にどこからどこまでを指すのか、はっきりさせる必要があります。なんせ地球上の水は全てつながっているのですから。
で、ここからここまでが紀の国川と決まり、めでたく
the Kinokuni River
何度も言いますが、地球上の水はつながっているんです。冠詞theは、ちゃんと区分けしました、区切りました、ということを示しているのです。
この考え方は、
- river
- ocean
- sea
- creek
などに当てはまります。
しかし当てはまらない水域もあるんです。
theがない水域
世界地図をよく見ると、つながっていない水があります。海洋につながっていない、孤立した水域。つまり湖です。
Lake Biwa
のようにlakeが最初に来る場合もあれば、
Red Lake
のように後の場合もあります。
水の形を表す単語で、lakeのように最初にくるのは、lakeだけではないかと思われます。
で、the Red Lakeとは言わず、theの無い Red Lakeです。
またbayの固有名詞にも、theがありません。
bayは、湾という意味ですが、いわゆる海が波で陸に押し寄せ凹んで湾曲した状態の水域の総称です。
その湾曲の大きさや形や深さなどで、さらに言い方があります。
gulf: 湾曲した地域が広大であるbay、メキシコ湾(the Gulf of Mexico)など
fjord: 長細く凹んだbay
bight: 浅瀬のbay
sound: 広く幅があり深さもあるbay
cove: 小さいbay
で、gulfの固有名詞は、
the Gulf of Maine
のように、「the Gulf of ~」の形をとることが多いです。
「the A of B」の形では、
A: 一般名詞
B: 名前
Aには、lake, bay, gulf, などが入ります。
少し話がそれましたが、bayとその仲間たちにも、theを伴いません。gulfにはtheがあるという学習サイトを見かけましたが、私が北米、中南米、ヨーロッパ、中東、アジアなど、世界の主なgulfとbayの英語名を調べましたところ、
「名前 Bay」
「名前 Gulf」
の形では、最初にtheはありません。
しかし湖や湾の集合体のときはtheを使って、
the Great Lakes
のようにtheを伴います。
またペルシア湾は、the Persian Gulfとよく言われますし、そういうふうに書いてある文章をよく見かけますが、国際水路機関に正式に登録されている表記は、「Persian Gulf」で、theはありません。
なぜlakeとbayには、theがないのか
ここで疑問が沸いてきます。なぜlakeとbay、bayの仲間の名前にはtheがつかないのか。
これは私の解釈ですが、湖は孤立した水なので、theを用いて、地球上のつながっている水を区別する必要が無いからではないかな、と思います。線を引いて、ここからここまでが琵琶湖です、という必要が無い。予め線引きがされている。
bayについても同じことが言えると思います。
bayやその仲間は、海岸に波が打ち寄せて凹んでできた、水がたまった所です。つまり行き場のない水。大きな水たまり。海と切り離されているわけではありませんが、行き場のない水がたまって、ある意味海から孤立している状態です。孤立した状態の水のたまり場なので、わざわざ線引きをしなくても、ここからが東京湾だと分かります。
こういう孤立した水、線引きしなくても、ここからがメキシコ湾、琵琶湖だと分かる状態の水。
このように考えると、川の名前にはなぜtheがあるのか、説明がつきます。川は一見theを使って線引きしなくても、ここからここまでが信濃川だと分かりますが、川の水は孤立していません。小川は大河とつながり、海へとつながっています。なのでtheを使って、ここからが信濃川と線引きする必要がある、と言えます。
まとめ
英語の冠詞theと水域の関係が理解できましたか?
もちろん世界中の水域の名前の英語表記を調べたわけではありませんので、例外もあるかと思います。
例えば日本海はJapan Seaとtheをつけません。なぜ無いのか考えると、やはり日本海は周りを日本列島や朝鮮半島などで囲まれていて、孤立しています。日本海がどのように出来上がったのかを調べると、海洋が大陸に打ち寄せて、湾のようになって、そんな歴史を知れば、theが無い海であることが理解できます。
英文法のルールとして、riverやoceanにはthe、lakeやbayには無し、と機械的に覚えるのではなく、もっと視覚的にtheなどの英語の冠詞を捉え、感覚で理解することを目指しましょう。そうすれば、一つ一つ冠詞をつけるつけないというふうに暗記しなくても、自然に冠詞を使い分けることができるようになります。
最後に
今回の説明を、世界地図を見ながら、あるいは湾や海、川を頭にイメージしながら読んでいくと、理解が深まるでしょう。
英語の冠詞を、イメージやビジョンで捉えることができるよう、他のページでも説明しています。
以上、英語の冠詞theと海や川などの水域との関係、その使い方について解説しました。