英語を学ぶ日本人にとって、一番の難関である冠詞を、理屈ではなく感覚で理解できるようになればしめたもの。
実際にどのように英語冠詞「a」「the」が使われるのか、エピソードをまじえて使い分けや違いを解説します。
たった一つのthe
以前上司が私との待ち合わせ場所に、マクドナルドを指定しました。マクドナルドで落ち合って、そのまま取引先に一緒に出向くためでした。
マクドナルドなんて、職場から数キロ以内に何店舗もあります。数十キロと範囲を広げれば、それこそ何十店舗。
しかしたくさんあるマクドナルドのお店でも、私が普段利用するのは、エバンズ通りにあるマクドナルドです。
上司は上司で、自宅と職場から比較的近い場所にあるマクドナルドによく行くようでした。
で、午前中外出していた上司から電話があり、昼1時にマクドナルドで待ち合わせて、取引先に一緒に行こうということに。
I'll meet you at the McDonald at 1 o'clock.
私は分かりましたと言って、電話を切りました。
たくさんあるマクドナルドの中でも、
the McDonald
と言うと、一体どういう意味をもつのでしょうか。
theというのは、名詞を一つに限定します。たくさんある中でも、一つ、自分がこれと思うものを吟味して選ぶ。任意に一つ選ぶのではありません。しっかりあれこれ吟味して選ぶのです。
ですから、たくさんあるマクドナルドの中から、適当に一店舗選んで、そこで待ち合わせではなく、
the McDonal あのマクドナルド
ということで、私にとってthe McDonaldといえば、そう、いつも行くエバンズ通りのマクドナルドのことです。
職場の近くにたくさんマクドナルドの店舗があっても、そこへは行かないので、私にとっては存在しないことと同じこと。
私にとって、唯一の、選びに選び抜かれたマクドナルドは、エバンズ通りの店舗だったのです。
待ち合わせに現れず
1時に間に合うようオフィスを出て、私はエバンズ通りのマクドナルドへ行きました。
お店の入り口で待っていましたが、1時を過ぎても上司は現れません。どうかしたのかと携帯に電話すると、今マクドナルドで私を待っているというではないですか。
もしかしたらお店の中にいるのかと、店内を見渡しましたが、上司の姿はありません。お店の周りを歩きましたが、やはり見当たらず、もう一度携帯を鳴らしました。
そしてようやく気づいたんでした。
そう、上司はエバンズ通りではない、違う店舗で私を待っていたんです。
私は慌てて、上司の待つマクドナルドへ向かいました。
上司にとって、the McDonald とは、自分がよく利用する自宅と職場からも近い場所の店舗のことだったのです。
こんなにたくさんマクドナルドがある中で、しっかりどこの店舗なのか確認しなかったのが悪いのですが、上司が最初にマクドナルドで待ち合わせようと言ったとき、上司の頭の中では、上司がいつも利用するマクドナルドが浮かんでいたのでした。
しかし私の頭の中では、私がいつも行くエバンズ通りのマクドナルドが浮かんでいました。
なぜ勘違いは起こった?
このような待ち合わせ場所を指定するとき、やはりお互いが知っている場所を選ぶのが普通でしょう。あるいは相手がその場所を知っているか、確認したりします。
しかし the McDonaldと言うことで、まず上司の中ではしっかりどこなのか明らかになっていました。それに対し、私は分かりましたと返答したので、上司はてっきり私が上司が指定したマクドナルドを知っていると思ったのです。
もし上司が、マクドナルドで待ち合わせしよう、二人にとって都合のいい場所のマクドナルドは、どこかな、というふうに言ったのであれば、じゃあ、取引先に近いジョンソン通りにあるマクドナルドにしましょう、と提案できたかもしれません。
つまり、
the McDonald
ではなく、
a McDonald
と、上司が尋いてくれれば、勘違いは起こらなかったかも。
a McDonald
とは、たくさんあるマクドナルドの店舗で、どれか任意の店舗を一つ選ぶ、という意味合いです。ちなみに単数なのも、上司と私が1時に待ち合わせることができるのは、一つの場所でしか、待ち合わせできないから。
結局1時半になって、ようやく上司と落ち合い、取引先に出向きました。取引先には2時の約束でしたから、遅刻はありませんでしたが、その前に上司が私にランチをおごってくれる時間がなくなり、残念でした。
その後、待ち合わせ場所の確認はしっかり行うようになったのは、言うまでもありません。
まとめ
一見、英語の冠詞って、あっても無くても同じなんじゃ、と思われがちです。日本語には冠詞という概念が無いので、そう思うのでしょう。しかし今回のエピソードのように、theという英語冠詞のせいで、とんでもないミスにつながってしまうという、そんなケースを紹介しました。
取引先に遅刻しなかったことだけは、幸でした。
英語冠詞を感覚で理解するために、様々なエピソードや実例を紹介していきます。
英語冠詞の文法的な解説は、以下で詳しく説明しています。